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日経新聞. 2022-12-23, 日経新聞電子版

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD287SU0Y2A121C2000000/

ー日本の国際的な強みを伸ばす教育が望まれるー

教育は、能力を開花させるツールであり、夢の実現の源泉だ。この点を見過ごすと意欲的な学びは成立しない。「日本経済の失われた 30 年」とは、教育と労働の両面で方向性とスピードを失い、世界から遅れをとった帰結である。

この 30 年、大学進学に AO 入試が採り入れられ、推薦入試で日ごろの学習の充実ぶりを進学に結び付ける傾向は強まった。しかし、進学塾は勢いを増し、親は塾に子どもを通わす経済的必要に駆られて、共働きを迫られる。家庭は子どもの創造性や意欲を高める基盤のはずなのに、頼みの両親が家を空けていることになる。

教育が所得格差を正当化・固定化するツールとなり、入試の傾向と対策に精通することが、将来の安穏を手にする源泉となる事態に、どう立ち向かえばよいのか。一義的には、教育が本来持つ高い価値と意義を確認できる、入試制度の変革しかない。

この問題に直面しているのは日本だけではない。アメリカは統一試験「SAT」を大学志願要件から外す傾向が昨年から強まっている。中国は「学習塾禁止令」で、教育を営利の道具にすることを 2021 年 7 月から禁じた。知識量の多寡だけを優劣の前提にするなら、子供は黙って長時間机に座り、知識をシャワーのように浴びて蓄積する教育がはびこるだろう。その受動的な学び方を問題視するなら、自ら調べ知識を自分なりに体系化することを促すことになる。さらに、その体系化が外部に正しく示されなくては宝の持ち腐れだから、相手に自分の考えを分かりやすく、筋道立てて伝える術を身に付けることが必要になる。だが、この学び方改革のどの段階においても「身に付けたい」という意欲が学ぶ側になければ、小手先の制度変更を繰り返すだけだ。

地球規模で進む多様性の時代に合わせて、入試改革や入学後の評価方法の変革は必須
だ。重要なのは「減点法ではなく加点法の導入」「日本の国際的な強みを伸ばす」ことである。受験生が独力で関門をクリアできるようにしているかも大事だ。「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」は、この点を見落としてはいけない。これらの検証を怠れば、日本経済は「失われた 40年」へと進むことになる。